ラストリゾート(リノベーション)

May 11, 2015

こんにちは、宮島です。UDATSUの経営ヴィジョンというと少々大げさですが、事業をやっている目的といってもいいかもしれません。「こういったユーザーに喜んでもらいたい」とか、「住宅業界がこんな流れになれば、日本人の暮らし方はもっとよくなる」といった、目指しているゴールを「ヴィジョン」と呼ぶことにしています。
ボクの周りの知人、業界の人たちと話をしていて感じることは、メディアなどでかなり「リノベ-ション」がフォーカスされていますが、その定義や理解は様々。現時点では、住宅は生活に必要な「モノ」を手に入れる事であって、「心の豊かさ」を満たしてくれる、また「自分らしさ」を表現するための「手段」にはなり切れていない、ということです。

【人が生活するのに必要な衣食住】
収納コンサルタントとか、断捨離というスタイルが注目されるなど、安いから買ってしまった、なんとなく買ってしまったモノたちが身の回りにあふれかえっている人も少なくありません。(ボクもそのうちのひとりです。。)モノを手に入れることが幸せであった時代はだいぶ前に完全に終わっているのです。最近のボクの習慣は、今起こっている世の中の現象は、70年前戦争でほとんどすべてのモノを失った、焼け野原からすべてが始まっている。そこから物事をいつも考えてみることです。

ちょっと前に、ビートたけしさんがTVで、「2020年の東京オリンピック開会式の演出を、世界のKITANOにやってほしい、とオファーが来たらどんな風にしますか?」と聞かれて、「オレなら、焼け野原からの復興のストーリーを演出する」と答えていました。ロンドン五輪で、ダニーボイルが産業革命から現在に至るイギリスを表現して、最後はポールマッカートニーが〆る、みたいなものですかね。
2015年の今が、70分ドラマのラストシーンであるとするならば、そのドラマのオープニングから前段20分までは、焼け野原からの復活シーンでしょう。アジアアフリカまで含めた全世界で最も貧しかった日本が、20年で奇跡の復活を成し遂げたストーリーです。45分あたりに経済面で世界を席巻して絶頂期を迎え、そこから衰退してゆき、今日に至っています。さあ、セカンドシーズンは、どんな物語になるのでしょうか。焼け野原の中、生き残った人々は、住むところもなく、身に着けていた衣服を着たままでも食べるものがあれば何とか生きられます。まずは、食糧を求めます。そしてその次に、多くの人が粗末な衣服を手に入れて、バラック住宅で雨露を凌いでいたわけです。そこから70年の間、衣食住はそれぞれどのような変遷をたどってきたでしょうか。

< 衣 >
終戦からしばらくして落ち着きを取り戻すと、アメリカ兵やその奥さんが着ていたファッションをまねするオシャレから、その後VANジャケットなどのアイビーファッションが流行し、80年代以降バブル時代まではDCブランドが一世を風靡しました。カードローンで買ったヴィトンのバッグを持った女性の自宅は、木造アパートのワンルームだったりして・・・90年代以降バブル崩壊から経済低迷期の時がファッションの「転換期」であったと思います。それ以前、オシャレとされていたのは、有名人が着ているものをまねて、創られた流行に乗っかること、つまり、「ブランドそのものを身に着けること」がかっこいい!とされていた時代から、例えば、1点ものの古着にファストファッションを組み合わせて、靴だけは価格の高いものを長く履きこなすといった、各々が自分を表現する「手段」としてのファッションがかっこいい!とされる時代に変わりました。ブランドという「モノ」を手に入れること自体に価値がある、という時代は終わったのではないでしょうか。

< 食 >
とにかく全国民が食べるモノを求めたていた時代から、空腹が満たされるようになると、食の欧米化が進み、初めて食べたビフテキの美味しさに感動し、ご馳走という「モノ」を食べることが明日の目標、活力の源になっていたのです。そして、女性も働く社会となり、外食産業が成長してきました。現在、日本の飲食店は世界最高水準である、と多くの日本人が自認し、また外国人からも認められています。特に東京は、和食はもちろん、中華やフレンチ、イタリアン、と世界の料理の一流店があります。1000円でワインと食事が楽しめるサイゼリアから、様々な種類のラーメン店、焼き鳥屋、立ち飲み屋、熟成肉を売りにする店、イタリアンではトスカーナ、シチリア地方などの各地の郷土料理、もう新しい業態が考えられないのでは?というくらい、ものすごいジャンルの業態の飲食店があります。体に良い食べ物、美味しい食事は、「心に豊かさ」を与えてくれると思います。

< 住 > 住宅業界
ボクは「ラストリゾート」であると思っています。つまり、最後の切り札です。
特徴は、衣や食と違いグローバル競争に直接的には巻き込まれにくい業界です。先日の日経にこんな記事が出ていました。米上場企業の15年前と今の時価総額を比較すると、マイクロソフト(▲32%)やシスコシステムズ(▲68%)DELL(上場廃止)などPC関連企業が衰退し、アップル(37倍)アマゾン(8倍)グーグル、Facebookが登場するなどSNS関連が市場を席巻しています。つまり、2015年の今の常識が、10年後の2025年には、あっという間に通用しなくなっているのが21世紀の世の中なのです。そんな今、住宅業界はどうでしょうか。
不動産仲介会社は、40年くらい前とほとんど同じやり方で仕事をしています。駅前に店舗を構えたり、チラシやダイレクトメールで入居、売却希望者を募集して、インターネットやチラシで物件にお客をつけます。デベロッパーは、新築物件を建てて売ります。最新の設備、建築技術は随分進歩しているものの、人口が減り、空室が増え続けていることを知りながら、今までとさほど変わらない画一的な間取りが供給され続けています。読んで字のごとく不動産という動かない資産であるという点で、アジアの安い人件費と競争させられるようなグローバル化の波に晒されることもなく、何とかやってこれちゃった業界なのです。

ガラパゴスとは、技術にばかりとらわれて世界から取り残された日本の携帯電話のことですが、不動産業界にこそ「ガラパゴス」の名称はふさわしいのではないでしょうか。ガラケーと違う点は、繰り返しになりますが、40年前と同じようなやり方でも何とかやれちゃう、ということです。 逆に考えれば、今までにない新しい事をやることで、ものすごくユーザーから支持される、伸びシロの大きい「最後の楽園」である、と思っています。
東京都内の都心新築マンションの広告を見てみてください。 数年前に比べて、2LDKでも1部屋が狭く、収納が少なく、リビングが狭くなっています。つまり、アベノミクスで土地が高騰し、建築費も復興需要から5年前の1.5倍以上に跳ね上がった、つまり原価の高い物件が出来上がります。すると、2つの寝室とLDKを少しずつ狭くして、各設備のグレードを万遍なく落とすことで販売価格を抑えて、なんとか売ろうとしています。 このあたりも30年前のバブル時代と発想が全く同じなのです。 しかし、その事情はボクにも理解することができます。デベロッパーは建築部、仕入部、営業部の人員を抱えていますから、生きていくためには、土地を買い、建物を建てて一定の期間で売りきる。これをやめることは出来ないのです。一度自転車をこぎ始めたら、止まることは死を意味します。 しかし、もういい加減自転車から降りてみる、着地点を見出して、今あるストックの有効活用へシフトすることが求められているのがこれからの時代なのです。

UDATSUの経営ヴィジョンは、家は、生活必需品として手に入れる「モノ」ではなく、心の豊かさを満たす、自分らしさを表現する「手段」であると考えて家を探している人に向かって、選んでいただける部屋を提供すること。使い込まれた床や壁を愛おしく感じ、それらのエイジングを楽しみ、そういった良質な古いモノは、新しいモノよりもむしろ価値が高くなる、という不動産業界にしたいなぁ、ということ、これが目標です。
これから日本人ユーザーの常識が変わり、サプライヤーである住宅業界自身が変わっていくこと。今こそ明治維新のように、自分達は世界と比べて遅れていることに気づき、あるべき姿に変わろうとすること。欧米人の暮らし方のよいところ、古いモノの価値が認められているマーケットの形成や、自分の家の価値を高める為に自らの時間やお金をそれに投資することなどをまねてみる。そして、それを日本流にアレンジして自分たちの新しい暮らし方にしてゆくことが求められる時代になっていくような気がします。
UDATSUはそのヴィジョンを実現するために事業を展開し、メンバーはそのことに共感してくれていて、同じ目標へ向かって1件づつ仕事をする。それが、今ボクにできる事です。