大阪の人(時事ネタ)

May 18, 2015

こんにちは、宮島です。
昨日、大阪都構想の住民投票が行われ、反対派に投票した人が少し多かったことによって、その案は否決されました。これは、いざ今の自分の生活に関わる体制が大きく変わる判断を迫られた時、様々な問題があったとしても、今のソコソコの自分の生活が悪くなるかもしれないリスクを負うくらいなら、現状維持の方が今より悪くはならないという点でいい、という日本人らしさが表れたように思います。朝のTVの街の声のコメントで大学生が「橋本さんで変わらんかったら、大阪はずーっと変わられへん」と答えていたのが印象的でした。
昨年のスコットランドみたいに、イギリスから独立するぞ!と意気込んでみたものの、いざ住民投票をしてみると、あまりの問題の大きさにビビってしまい、現状維持という判断になったことを見ても、日本人に限らず一度豊かさを手にしてしまうと、人間はリスクを取ることを嫌って、それを守ろうとする力が働くのかもしれません。

大分昔の話ですが大学時代、ボクはバイトに明け暮れていましたが、唯一興味を持って受けた授業で、副読本として土居健郎さんの「甘えの構造」を読んだのを憶えています。この本によると、「甘え」は日本人独自の心理であり、他国の言語に「甘え」という言葉は存在しないそうです。「甘え」は日本の社会構造を理解するための重要なキーワードです。この本は1971年に創刊されて以来、世界を席巻した日本を分析する海外の学者に大きな影響を与えた、と言われています。

  • 甘え:周りの人に好かれて、依存できる状態に自分を置く、という感情
  • 甘え合うことで社会が成り立ってしまっていることにより、結果として「他人に依存して存在する自分」「愛情を受け身的に求める」とか「自分で考える能力を失う」という日本人の特性が、西欧社会に比べて「幼稚で閉鎖的」と世界の中では評価されていました。一方、その日本独特な社会構造だからこそ団結力が生まれ、高度成長が成し遂げられた一面もあるのだ、というようなことを説いていたように記憶しています。これを読んで、「確かに、あるある」と感じながら、自分が働くとしたら、入社さえすればソコソコの働きでも一生安泰という働き方、生き方だけはしたくない。だから決して公務員や、甘え合う安定した大企業には入ってはいけない。実力主義、成果主義の企業で働いて、10年で独立する、と考えていました。

    その時代に「甘え」が許されたというより、うまく甘えられる人が世の中では勝者になっていました。
    高度経済成長時代は、みんな給料が上がり続けて、今日より明日、明日より明後日が明るかった時代で、大学を卒業してサラリーマンとして最初に入った会社に、一生忠誠を誓うことによって、会社からは「会社に甘えていいのよ」とそれなりの恩恵を受け続けることが出来たのです。部下は上司にごまをすり、上司はそのまた上司に、社長は企業間同士や銀行と株式を持ち合って、金融機関は官僚に甘え、官僚も護送船団方式で各業界を保護していました。官僚と政治家も寄り添い、政治家は金を配ったり、仕事を配分する代わりに票を得ています。地方は中央に甘えれば、中央から交付金を受け取ることができました。それらは全部、奇跡の成長が持続的に続いた日本だからこそ成り立ったのです。今はもう完全にそんな時代は終わっているのにもかかわらず、日本には「甘えるのは良い事」という常識は今もなお、続いているように見えます。

    今回の大阪市住民投票で今更ながらわかったのは、自民、民主、公明、共産党まですべての既成政党が、未だにこの甘えの構造の中で生きている人たちであった、という事実でした。この人たちは公の為に必要な事を棚に上げて、今すでに持っている自分の権利を脅かそうとするものに対して、自民党が共産党とまでも手を取り合って、なりふり構わずそれをつぶしにかかりました。
    江戸時代の平和な250年の後に、世の中を時代に合わせて変化させた維新。今、グローバル社会、成熟社会に時代は完全に変わってしまったのにも関わらず、日本人の発想は70年続いた平和な時代、ソコソコの豊かさを守ろうとして、橋本徹という天才をもってしても変われないでいる。日本人は未だに高度経済成長時代の「甘え」という構造から抜け出すことが出来ないでいるのです。