旅の醍醐味(趣味)

June 30, 2014

こんにちは、宮島です。今をときめく有吉弘行が、猿岩石としてインドからロンドンまでヒッチハイクで旅をするTV番組が大ブレイクしたのが、もう20年前の話。この企画のネタのもとになっているのが、沢木耕太郎の「深夜特急」という旅行記。ボクも高校生の時に初めて読んで以来、旅のし方の教科書になっている本だ。
話は、デリーから、バスに乗り継いででロンドンまで行くという、やろうと思えば誰でもできる、でも誰もやる者はいないであろう酔狂な旅をしてみる、というもの。旅をする沢木青年は26歳、ジャーナリストとして仕事も増え始め、ちょうど進むべき方向性が、固まりつつあるお年頃。やりたいものだけを書いてゆくという理想と、求められる仕事をこなしてゆく、という現実に起こっているうねりに、このまま流されてゆくと後で後悔するだとうと、執行猶予を手にするために、全ての仕事を中断しての旅に出たのであった。
この本では、旅をする中で何かを得ることによって、だいたい同じくらい何かを失うことになるということが様々なシーンから読み取れる。バックパックでも、スーツケースでも、日程があらかじめ決められた旅行ではなく、風の吹くまま身を任せ旅すること、人や街に偶然出会うことや、思いもかけない感動にめぐりあうことこそが旅の醍醐味であることを教えてくれている。

今の時代、仮に地球の真裏ブラジルにいたとしても、iphoneにグーグルマップを起動させれば、今どこにいて、どの方向を向いているか正確に表示される。ボクたちのいつもの生活の中でも、車の運転はカーナビのいいなりに運転するだけで目的にたどり着けるから、道を覚えようとする気持ちはよほどのことがなければ必要がない。
SNSでそのコミュニティに対し、自らのメッセージを発信することが可能になり、それを凄い勢いで拡散させることは、革新的な伝達手段であり合理的な一方で、ただ単に楽をしているだけに過ぎない場合もある。一度手にした便利さは、二度と手放すことはできない。ITを生かした新兵器が生活に完全に浸透することで、圧倒的な情報が得られるようになった。
合理的で失敗する可能性が最小化される代わりに、ボクたちは今、ややもすれば思考停止に陥る羽目になり、その便利さとほぼ同じ量の大事な何かを失しなってしまったような気がする。たまには、不便さや非合理的なやり方や、そういった場にあえて身を置いて、自分の方向感覚を磨くことが必要ではないだろうか、と思う。