リノベーション市場はこれからどうなっていくか。(リノベーション)

December 29, 2014

こんにちは、宮島です。リノベーション市場はこれからどうなっていくか。国土交通省は数年前に新成長戦略の一環である中古住宅リフォームトータルプランを策定し、8兆円くらいであるリフォーム市場を2020年までに20兆円に拡大させる為、様々な政策を実施してゆくことを決定しました。これがうまく機能していったらいいなぁ、と思います。しかし、UDATSUの事業計画はジワジワとしか市場は拡大しない、という前提でたてられているのですが。

実際のビジネスでは、これだけリノベーションがフォーカスされているにもかかわらず、残念ながら未だ新築住宅を買う予算がある場合に、あえて中古を買ってリノベーションする人はほとんど増えていないのです。姉歯耐震偽装事件や大震災など、不幸にも最近の出来事は、新築のほうが地震に強くて安心だ、といったユーザーのマインドに拍車がかけることになってしまったことも、こういった結果をもたらす一因になっているのかもしれません。
今まで、家を買うことを必要としていたオジサマ世代、その背中を見て育った次の世代にとって、家は手に入れるもので、自分らしい趣向を表現する居住空間ではありませんでした。中古は新築を買う予算がない人がやむを得ず買うもの、というのが常識だったのです。これは今まで、日本人が住宅とどのように関わってきたか、戦後の歴史をみればある意味当然のことかもしれません。
日本とアメリカの住宅、リノベ事情を表で比べてみます。

日本は戦争で、東京と主な大都市を丸焼けにされた後、それを再建するために、とにもかくにもスピード重視、ものすごい勢いで団地などの住宅を大量供給してきました。それらの規格や間取りはほとんど同じものでした。雨露凌ぐための必需品であった住宅、貧しかった日本人がとにかく頑張って働いて住宅を手に入れる、そこに余計なコストをかける余裕などなかった時代だったのですから。

日本が世界を席巻した1980年代、欧米人からウサギ小屋に住むエコノミックアニマルと揶揄されてもめげず、一度も価値が下がらなかった土地を信じて、その資産価値に投資することがいいことだ、という風に住宅と関わってきました。いずれは夢の一戸建て!とモノを手に入れることを目標にみんな頑張って働いてきたのです。ある意味、今、何が夢なのか幸せなのか、様々な形がありすぎて逆に複雑化してしまったこの現代に比べ、単純でわかりやすい夢や目標があった時代でした。
しかしそこには、古いものを大切に、本当に長く使える素材にはお金をかけるといった発想はなく、木造なら20年も過ぎれば、壊して土地を半分にして二軒の家を建てて分譲したほうが、デベロッパーの利益が上がり、銀行も新しい建物には融資をしたがり、優遇税制も古いものには適用されず、ユーザーも新しいだけ、というモノに価値を求めてきました。日本人の本来の美徳である「良いものを長く使う、もったいない精神」は、こと住宅業界では発揮されることなく、ずーっと、やってきたのです。

一方、アメリカでは、60年以上前からNYのSOHO地区で、今日本でオシャレとされているようなリノベーションという暮らし方が芽生え(日本が焼け野原から再建中と同じころ)、それが醸成され、1980年代には大多数の庶民が、便利な場所に住むのなら、中古を買ってリノベーションするのが当たり前、というように長い時間をかけて、今は完全に定着しているのです。
その時間と比べれば、日本はせいぜいここ数年~十数年、古い建物の古さを活かしながらリノベーションする暮らし方がようやく始まったばかりじゃないですか。そんなに急に今までの既成の価値観から、リノベして暮らす、と言ったって、そうそう簡単に変われるものではないと思うのです。ボクたちは、腰を据えて1件1件じっくりやっていきます。

ワールドカップで日本が優勝するなんて、50-100年早い!というのと同じように。サッカーの歴史、子供たちのサッカー人口やその育成する環境、国民の日常においてのサッカーがどのように溶け込んでいるか、というような様々な要素が、長い年月かけて熟成されてきてはじめて、大舞台で紙一重の勝負を勝ち抜くことが出来るのです。だから、サムライジャパンが欧州や南米を追い越すことは、一朝一夕でできるようなことではありません。

近いうちにやってみたいなぁ、と思っていることがあります。日本のお家芸である、欧米のマネをして取り入れ、日本流にアレンジするという今までのやり方ではなく、日本古来の建築や暮らしを、今の時代に合わせてリノベーションすることです。木造軸組建築の一戸建てをリノベーションする、ということになりますが、新しい建物はほとんど2×4工法、築後30年程度のものはエイジングを楽しめない新建材が使われ、それ以前の築後70-100年の本物の古くてよい建物は、空襲で全部焼かれてしまっているというのが東京です。
そう考えると、築後60年超の在来建築物であるUDATSUオフィス。東京の貴重な財産である、と断言できます。昨年お亡くなりになったお師匠さん(日本舞踊の先生である大家さん)、今までこのコンディションを維持してくださって、ありがとうございました。これからも社員一同、大切に使わせていただきます。