こんにちは、宮島です。前回、前々回と藤原さんの著書「家づくり」をご紹介をさせていただきました。その結論はエンドユーザー、住まい手である私たち自身が、「家オタク」ともいえる「お宅通」として、ひとりづつ増殖してゆくことによって、日本人の家との関わりや暮らしは革命的に変わってゆく、といったものでした。
話は変わって、今年の春、三井不動産が1999年に建てた、佃島にある大川端リバーシティ21(54階建て 総戸数756戸)の大規模修繕工事の入札があり、鹿島、大成、大林、清水、竹中の5社とも20億円の工事価格では採算が合わず、入札が不調に終わったそうです。 分譲マンションで区分所有者700名を超える人たちの意見をまとめ、適切なタイミングと予算で修繕を進めていくことは、そう簡単なことではないなぁ、と他人事ながらご苦労お察しいたしました。 一方、6月には、タワーマンションのハシリである、川口市のエルザタワー(55階建て 総戸数650戸 1998年竣工)が、工事費12億円で清水建設子会社が受注し、その代金全額は修繕積立金でまかなうことが出来るのだ、と新聞に出ていました。うまくいくこと、いかないこと、きっと何かの理由があるのでしょうね。
通常の外壁改修工事の場合、足場を組んで飛散防止の網が掛けられている風景をよく見かけます。
足場は風の影響や安全性から45mまで、16階位までしか掛けられないので、超高層マンションの場合はゴンドラをぶら下げてそこで職人が作業するわけですが、そのゴンドラの性能や一度にいろいろな作業ができるかどうかの工程の組み方、そもそも建物自体がこういった修繕工事時の作業効率をどこまで配慮した設計がなされているかによって、その代金は大きく変わってくるのです。
プロの大家である三井不動産がスポンサーのJ-REIT日本アコモデーションファンド投資法人が保有するリバーポイントタワーでは、数年前には大規模修繕が完了しており、1棟すべてを保有するプロが運用する場合と、分譲で多数の個人が進行していく場合では大きな違いが出てきます。
ここしばらくで、バンバン建てられているタワーマンションも、10-15年後には必ず大規模修繕を実施する時期がいやでも必ず来ます。この時に、区分所有者は素人だからよくわからない、プロの管理会社に丸投げのお任せ、というような事をした場合、歴史の浅い工事のやり方であることからも、「ものすごい割高な」工事を押しつけられるかもしれません。
建設業界のそのときの市況により、工事代金が大きくぶれることは起こり得ることですが、ほとんど歴史がなく人気のあるタワーマンションの大規模修繕は日本人、特に東京では注目すべき問題になってくると思います。ボクは10数年前、新宿区の分譲マンションに住んでいた時、理事長になって管理費、修繕積立金の減額を目的として、管理受託報酬や運営コストの見直しや修繕計画立て直しなどに取り組んだ経験があります。率直な感想は、「二度とやりたくない・・・」
その時決めたのは、「全部管理会社へ丸投げしない」
管理会社の下にぶら下がっている各種業者を、全部自分たちで選択し、その工事管理を管理会社にやってもらう形式にしました。EVのメンテ会社を変えようとすれば、そのEVメーカー系子会社から「いったん契約を解除したら、部品を供給できないかも・・」と脅されながらも、独禁法を盾に供給を約束させて他社へ切り替えたり、建物法定検査業者、その指摘事項改修業者、植栽業者、大規模修繕を請け負う業者などもろもろの交渉をやって、管理会社自体も数社の入札としました。すると、あらふしぎ。 管理費が55%下がったのです。
みんなの月々徴収する管理費を40%下げて、残りの15%は修繕積立金会計に充当させて、将来の大規模修繕時にも一時金が出ない収支構造に、この組合は生まれ変わることが出来ました。
「なぜ二度とやりたくないか・・・」ここまで無報酬でやって、感謝してくれる人もいました。しかし、結構な人たちから、「あいつは、新しい業者と結託してなにか裏でやっているのではないか?」「管理人の人件費を安くすると、サービスの質が下がる!」「EVのメンテをメーカー系から独立系に変えて、事故が起こったら、お前が責任とれ!」などなど。。
この業界にいて、専門家へ意見を聞いて実態を把握しやすい立場だったことも手伝ってくれて、良い勉強をさせていただいた、と今では思っておりますが・・・旧住民の現状維持体質にほとほとくたびれてしまったのでした。自分の家、一戸建てよりもむしろマンションのような共同住宅に無関心な人は相当数います。まるで、PTAや町内会の役員という奉仕を免れようとするみたいに、眼を伏せたりして。
だからこそ、みんなの共有財産である建物を長持ちさせるためにそそぐ情熱や、どの専門家を雇ってアドバイスを求めるべきか自分たちの頭で考える力、素人だからお任せ、ではなく、専門家に「ウチはこんな風にやりたい」と、語る事の出来る「お宅通」が、分譲マンションの管理組合にこそ、求められる時代にますますなってゆくのではないでしょうか。