こんにちは、宮島です。 先週、三井不動産の分譲マンションが施工不良で傾いたという事件が報道されました。
施工会社の三井住友建設が委託した、旭化成建材が杭打ちの裏づけになるデーターを改ざんしていたことが原因で、何本かの杭が支持層に届いていなかったそうです。
これは、天下の三井でさえ、その下請けの偽装が原因で、問題がどこまで広がっているのか実態が完全にはわからない、三井でさえこんなことがあるのなら、ましてや、、、
と考えてしまうと、日本のすべてのマンションデベロッパーを信用問題につながりかねないおおきな事件に広がることになるかもしれません。早々に、住友、野村など大手各社は、供給した自社物件の調査に乗り出し始めました。 世の中に不安をばらまくことになってしまった住宅業界の犯した罪であると思います。
マンションの構造計算書をごまかした姉歯一級建築士の耐震偽装が社会問題となったのが、10年前のこと。
「明るみに出るリスクが低い」、「どうせわからない」と判断をしてごまかしをしたり、法令違反をすることが悪い事であるのは明らかです。
一方、こういった問題が断続的におこるのには、消費者のニーズが問題を起こさせる一面もあります。
その消費者のニーズとは、「家は新しいほうがいい」「家をも持つなら新築」、古い家を買う人は、新品を買う予算がないから仕方がなく中古を買う、という常識が影響しています。
その結果、新しいだけのモノが求められるから、デベロッパーは、耐久性よりもローコストを優先した方が儲かるので、安く仕上げることに注力してゆくのです。 つまり、「まだ使えるのに古いモノを壊して、新しいモノを建てる」
スクラップ&ビルドが、消費者からも、サプライヤーからも支持されているのです。
「地震に強い都市にするために、老朽化した建物を建て替える」というのは、一見正しい事に聞こえますが、反面、まだ利用できるのにもかかわらす、木造なら20年で価値がゼロ、RCでも40-50年で壊して、建物が新築されます。
新築にニーズがある、低価格で販売できるように建物を企画し、請け負うゼネコンは、画一的で均一の施工性の高い材料や工法を開発します。
逆に言えば、耐久性60年のある木造建築や、120年は使えるであろうRCの建物が、3割高い価格で供給されてもそれを評価して高いほうを購入する人はほんの一握りのお金持ちだけだし、その高品質の建物が30年経過した時、中古住宅としての市場価格は普通の築30年の建物と同じような評価しかされないのです。 消費者が、新しくて価格の安いものを求め続けているから、中古住宅の価値が低くなります。
デベロッパーも耐久性に優れた高品質高価格の商品はニーズがない上に、それが古くなったとき評価されないのであれば、それは効果的な投資とは言えませんから、そういうものは作りません。
スクラップ&ビルドが圧倒的に支持されている今の日本で、あってはいけないことですが、コスト削減競争の中で、明るみに出る可能性が低ければごまかすという誘惑に負けて、一線を越えるということが起こりやすい構造になってしまっているのです。
ユーザーが価格が安くて新しいだけのモノを求め続ける構造が変わらない限り、今後も起こり得る事なのではないでしょうか。
日本も欧米に見習い、建物に手を入れて、可能な限り長く大切に使うこと、新しいモノだけを求め続けず、古くても味わいのある使いこまれたモノの価値を評価するといった住宅マーケットに変化してゆきたいものです。
消費者の意識が大きく変わることだけで、供給業者はコロッとそれに合わせて行動を変えざるを得ないのです。