2014/12/19 「日本仕事百科」掲載記事
両立して働く
十人十色。そんな言葉があるけれど、多くの人は画一化された労働条件のなかで働いている。でも子どもがいるから、毎日15時に退社したい人だっている。毎月1週間は、自分のやりたいことに打ち込みたい人も。そう望むのは、ごく自然だと思う。そして、そんな人の多様性を受け入れる会社があります。
東京・渋谷にある不動産投資会社、ウダツ。仕入れから設計、施工、販売まで。すべて一貫したリノベーション事業を展開しています。
ここで働く人たちは、仕事とライフワークの両立に取り組んでいます。どちらかを犠牲にするのではなく、両方に本気。だから大変でもあり、楽しくもある。同じような姿勢で、一緒に働いてくれる人を募集します。こんな能力があるのに、こんな働き方がしたいのに、合う会社がなかなか見つからないという人。そんな人に、ぜひ読んでほしいです。
渋谷駅から歩いて10分ほど。金王神社の先に、ウダツのオフィスがある。まわりの住宅とは雰囲気が一際違う、築60年以上の木造家屋。勝手口から2階へ上がり、話をうかがいます。
ウダツは、2010年に代表の宮島さんが立ち上げた会社。大手不動産会社や外資系ファンドを経てひとり独立し、中古物件をリノベーションしてきた。
目指しているのは「ちょうどいいリノベーションで、陳腐化しない不動産」をつくること。“WHITE BOX ㎥(ホワイトボックス)”というコンセプトで、飾り気のない白い箱のような物件を、手頃な価格で販売している。
白い壁に、無垢材の床。余計なデザインがないから、どんな趣味趣向の人でも自分色の住空間を表現できる。お客さんは感度が高く、こだわりの強い人が多いという。
そんなお客さんからの問い合わせを受け、物件案内を担当するのが岡本さん。どんなふうに仕事をしているのか、聞いてみた。
「はじめてのお問い合わせで『こんな物件あったんだ!』っていわれることがすごく多くて。WHITE BOX ㎥事業がもっと認知されれば、見てみたいって思ってくれる人は、まだまだいると思うんです。」
買取った物件を、WHITE BOX ㎥のテイストにリノベーションして、販売する。一般的な不動産屋とは大きく異なり、ウダツはこれらすべてを自社で手掛けている。物件案内の仕方も一味違うようだ。
「各部屋に一緒について回るような、いわゆる“不動産屋の営業”はしないです。」
「まずは『ご自由にご覧ください』と話して、あとは自由にしてもらう。様子を伺いながら、お客さんの気になっているポイントを見つけて説明するんです。お客さまのかゆいところを、ポリポリとかいてあげるみたいに。」
物件を勧めるようなことはしないという。欲しいけど、ここが引っかかっているから決断できない。そんな様子のときだけ、善し悪しを含めた判断材料を、こちらから提供する。
「『こんなプロセスでできあがって、ローコストでこれだけのクオリティですよ』って、自分たちでつくっているからこそ伝えられる。ほかにないデザインだし、値段もいい。わたし自身もすごくいい商品だと思っているから、ご案内しているときに『なんで買わないのかな?』って不思議に思ってしまうことがあるんです。」
物件見学をしたお客さんから、自宅をWHITE BOX ㎥のようにリノベーションしてほしいと依頼されることがあるという。そんな声を受けてはじめたのが、“My+U(my house+UDATSU)”という施工サービス。
少人数の会社なので、現場が立て込んでいないときに請けるといったペースで進めていて、ときには岡本さんも現場監督をしている。こうした仕事のほかにもチラシ制作やホームページの更新・リニューアル、ほかの現場監督担当スタッフのサポートをしている。
岡本さんはいろんな役割をマルチに担っているけど、はじめは建築・不動産など全くの未経験でウダツに加わった。東京の大学を卒業後、梱包箱の制作メーカーで設計担当として2年、キャラクターグッズの制作会社で制作ディレクターとして9年勤めた。
経験がないなか、ウダツで大変なことはなかったのだろうか。
「もちろんありましたよ。はじめは分からないことだらけで。でも、ものづくりの経験がある人だったら、絶対できるんじゃないかって思うんです。」
「というのも、ものをつくる根本的な流れとしては、あんまり違いがないんですよね。前の会社もウダツも少人数の会社だから、自分ですべてやらなきゃいけないところが似ている。単純にロットと商品価格が変わっただけっていう感覚なんです。」
ここで働こうと思ったきっかけを聞いてみた。
「2地域居住をしたかったんです。昔から、ずっと地元に帰りたくて。」
「もともと知人だった宮島さんにそのことを話したら、うちで働きながらチャレンジしないかって話してくれて。地元で何をするのか明確なものはなかったけど、入社してからとりあえず行ったり来たりしてみようと。」
地元は島根県浜田市。月に1週間をここで過ごし、のこりの3週間はウダツで仕事をしている。そんななか、島根で新しい事業をはじめた。
「すごく広くて立派な古民家が空き家になっているのを見つけたのがきっかけで。なんとか一括で借りることができたので、毎月帰りながら自分でリノベーションをしていたんです。オフィススペースとシェアスペース、それと居住スペースもつくって、地元企業さんや地域の方がイベント会場としても使えるようにして。」
当面の目標は、家賃収入を安定させ、持続可能な状態にすることだという。
「はじめは2地域居住ができればいいやと思って入ったけど。ふたを開ければ、ここでの経験を島根にぜんぶ活かせちゃってました。」
岡本さんはお子さんが生まれるタイミングで島根へ帰るため、2015年の1月いっぱいでウダツを退職する。今回新たに加わる人は、岡本さんの役割を引き継ぎつくことになるか、不動産の経験があれば自社物件の案内や物件の仕入れの仕事が任される。岡本さんは、どんな人に来てもらいたいですか?
「業務は多岐にわたるから、自分の役割じゃないって言うんじゃなくて、『何それ!』って好奇心旺盛に取り組んでくれる人。それと、職人さんやお客さん、いろんな人と関わるからコミュニケーションできる人がいいかな。」
「ウダツに入るとほんとうにいろんな経験ができると思う。凝り固まった自分の常識とか偏見とか、そういうものを取っ払って飛び込んでほしいです。」
岡本さんのほかにも、仕事とライフワークの両立を目指すスタッフがいる。みなさんが口を揃えていうのは「両方をバランスよく進めるのは難しい」ということ。仕事とライフワーク。費やす時間は7:3だけど、両方に本気で取り組まなければならない。
「ライフワークができることでモチベーションが高まり、結果としてウダツの仕事によい影響を与えてくれるはずだと。だけどこれまでやってきて、並大抵のことでは難しいと分かったんです。」
そう話すのは、代表の宮島さん。
でも、やりたいこととの両立はこれからも継続していくつもりだという。それを成り立たせるためには、7の時間で10の結果を出すことが必要だ。
「短時間で結果を出す、プロになろうと。もちろんはじめからプロに集まってもらうのが一番ですけど、うちに興味を持ってくれた人なら未経験でもいい。仕事で経験を積んだり、勉強していくことでプロになってもらおうと。3年や5年かかると思いますけど、そんなプロ集団になっていこうと目標を掲げています。」
不動産や投資について学ぶため、勉強会を週に1回開いている。そもそもお金とはどんなものなのか。そういったテーマで話し合うこともある。
「お金は大事だけど、振り回されてはいけない。紙幣そのものに価値はなく、無色透明な数字でしかないお金だからこそ、使い方によってその人の人間性が表れるものだと思います。大きな投資をするリスクの高い事業だから考え抜く必要がある。そんな話をきっかけに、プライベートでのお金の使い方についても話し合ったりして。」
ときには、会社のあり方を議論するようなことも。
女性社員が妊娠したことで降格されたことがニュースで大きく報じられた翌週に、それをテーマに産休などについて話し合ったという。
「ここに来るまで、それぞれキャリアが違うから、意外と価値観とか常識が違って。みんなの考えを知ることができて、よかったです。」と岡本さん。
こういったことについて話し合うのも、ほかの不動産屋とは違う、ウダツらしさだと思う。姿勢が人に向けられているというか。どのスタッフにも物腰の柔らかさを感じる。
そんな雰囲気に合う方がひとり、前回の募集で新たに加わった。まだ入社数ヶ月とは思えないほど馴染んでいる、大久保さん。大学では建築を学び、卒業後は設計事務所に就職。5年間勤め、ウダツに転職した。これまで建築経験者がいなかったウダツに、新しいエッセンスを加える人材として期待されている。
「もともと、図面とか模型じゃなくて、実際に自分の力でものをつくりたいっていう気持ちがあって。友人からオフィスのリノベーションを頼まれたときは、設計事務所に勤めながら土日にセルフビルドでリノベーションをしていました。」
「壁をつくって、床を貼って、塗装して。なるべく自力で頑張って、水道とか電気みたいにできないことは業者さんにお願いをしていました。」
それは、いま大久保さんがウダツで担当している仕事と同じこと。施工を自社で手掛けているウダツでは、スタッフが施工や現場監督を務めている。
「仕事が一段落着いたので、設計事務所は卒業というか。仕事百貨を見ていたら、仕入れから施工までぜんぶやる会社があることを知って。自分でつくるのが好きだったので、応募してみました。」
入ってみて、どうでしたか?
「ギャップはないんですよ。ほんとそのまま。仕事百貨に書かれたこと、物件の雰囲気、デザインの仕方。それを見れば、どんな会社か掴めますよ。」
ただ、仕事は思った以上にスピード感があったそう。
リノベーションだと、解体するまで見えない部分があるから、その場で次々に決断していかなければならない。少人数の会社だから、思わぬ仕事が舞い込むことがある。
「難しいことはたくさんあります。ただ大事なのは、楽しめる自分がいるかだと思うんです。作業、状況、環境。何事も楽しまないと。」
仕事とやりたいことを両立できる。それは魅力的だと思う一方、とても難しいことだと思う。だけど、日々軌道修正しながら、それを実現していこうと会社全体で取り組んでいます。大久保さんが言う、自分がいかに楽しめるか。そんな心持ちで飛び込んでくれる人を、お待ちしています。