日本仕事百貨 掲載記事(リノベーションのすべてがわかる気づいたころには独り立ち 編)

July 30, 2025

2025/07 「日本仕事百貨」掲載記事

リノベーションの
すべてがわかる
気づいたころには独り立ち

 

創業以来今いるメバーでできる案件をこなしてきて結果としてゆるやかな成長をしてきました過去一度もノルマ的なものを課したことはなかったけどはじめて売上目標を立てることにしました

3年以内に年間取扱物件を60件売上を40億円まで伸ばします今の粗利率のままその目標を達成できれば社員の平均年収が1000万円を超えてくるので

そう話すのはウダツで代表を務める宮島さん

ウダツはリノベーシの再販会社です自分たちが借入金で物件を仕入れいったんオーナーとなりそれを外注せずに自ら施工しユーザーへ直販するところまで一気通貫でおこなっています

取り扱うのはほとんどが昭和57年以前に建てられた旧耐震の物件

売れ残りリスクを考えて旧耐震の物件を買う競合業者は少ないので比較的安く買うことができる工事も外注せずに自分たちで手がけているため品質の高い材料や設備を採用し手間をかけて施工してもトータルコストは抑えやすい

それは結果としてお客さんの買い求めやすさにもつながっています

事業規模の拡大にともない新たに現場監督を募集します

経験を積んで独立するのも歓迎ですOBには退職後に一級建築士の資格を取得自分でも大工仕事をしながらウダツの現場監督の仕事を業務受託している人もいます

スピードの早い環境なので建築についての熱意や知識は欠かせませんただ先輩スタッフも未経験から挑戦しているので受け入れる土壌があります

 

目黒駅からバスで5分ほどの路面店舗の一角にウダツのオフスがある

白を基調とした空間にスチールラックや大きな木製のテーブルなど温かみと武骨さが感じられる雰囲気庭もついていて明るい日差しが差し込んでいる

日本仕事百貨で取材するのはこれで13回目

およそ2年ぶりに代表の宮島さんに話を聞く

ここ2年ほどを振り返ると売り上げは4割増えて26億物件数でいうと3割増えて年間で47件ほど再販物件を手がけています

旧耐震が得意だという業界での認知が進んで仕入れ情報が増え都心の暮らしにフットする間取プラと値付けが的確にできているのがその要因かと考えていて

最近立て続けに販売したというのが昭和37年竣工の目白台ハウスだ

5,000㎡以上ある広大な敷地に地下1階地上8階建て127世帯

トラスホールは広々としていてデザも昭和モダにつくりこまれ管理人も4人体制当時のそういった団地暮らしは庶民の憧れだったそう

昔からずっと住んでいる人たちの建物への愛情もすごく共用部の修繕にも手厚く費用をかけて大切に住まわれてきた

そんなマを数室仕入れ丁寧にしっかりと予算をかけてリノベーシして販売したところすぐに完売してしまった

築年数が60年以上という事実だけみれば普通は敬遠するでも優れた管理状況や十分な積立金と修繕計画がある物件なら買いたい住みたいと思う人は必ずいる

長年にわたり築かれた住民同士のいい関係性など数値化しづらいポトも目利きすることで古いけど着実に売れる物件を取り扱えるようになったと思います

現在は営業現場監督バックオフそれぞれ2名のメバーで全体で6人の社員がいる最近はOBOGのメバーに業務委託で現場監督をしてもらうことも増えてきたそう

事業拡大にともない新たに現場監督を募集することになった

うちはリノベーシに必要な工事の構造も原価もすべて知れるほかの会社ではできないような経験ができると思っていて

大工仕事を覚えて辞めたあとに一級建築士の資格をとって独立した人もいるんですよいまでも彼とは仲良くしていて今日も来てもらいました

 

そういって紹介してくれたのは大久保さん

2013年から4年間ウダツで現場監督の経験を積んで独立

いまは世田谷に一級建築事務所を構え業務委託としてウダツの現場監督もしている

ウダツの前は設計事務所で5年ほど働いていた大久保さん

設計は設計現場は現場という分業制のなかでもっと現場も見ることができる仕事に就きたいと思うようにそんなときに日本仕事百貨でウダツの求人記事を見つけた

その記事で宮島がすべて自分たちでやらないと気が済まない会社って話していたんですね設計も施工も自分たちで全部おこなっているところに惹かれて応募しました

朝から晩まで現場に行って自分も手を動かす帰ってきてからは図面の作成や資材の発注などをする解体するときに出る木材や鉄などのゴミ出しも自分たちでおこなっていた

業者に頼んだらこれくらいかかるけど自分たちで出したら原価がわかる大工仕事も手伝ったら設備屋さんが少し値引きしてくれてその差額分が利益にもなるじゃないですか

いまでもそうやって原価をつけていてつくるための原価がすべてわかるのは独立するうえですごく役に立ちました

お金まわりだけでなく現場で大工さんの仕事を見て学び空間に壁を立てたり床を張ったり施工に関することも少しずつ技術を身につけていった

自分の建築事務所ではいまは大工仕事が多いです内装工事を受けることもあればトでキッチを変えてほしい仕事もありますし昨年は宮大工さんたちと一緒に戸建てもつくりました

戸建てまで…!すごいですねもともと独立願望があったのでしょうか

はじめは独立したいって明確には思っていませんでしたただ自分で空間をつくりたい気持ちがずっとあったんですよねその興味に従っていまにいたります

独立後の働き方についても聞いてみる

ウダツの仕事と個人の仕事は半々くらい自分の仕事が空いているときにグがあえばやらせてもらっています個人だと案件の繁閑があったりするので空いているときに仕事を頂けるのはありがたいですね

大久保さんが自分の事務所で請け負った案件でもウダツに勤めていたときから付き合いのある職人さんにお願いして工事してもらうこともあるという

業界としては職人さんの取り合いで問題になるケースも多い宮島さんが快諾してくれたおかげで助かっています

ほかにももともとウダツのスタッフでいまは業務委託で関わっている女性の現場監督もいるまた基本はリモートワークが中心だけれど新しく入る人が会社に早く馴染めるようにはじめの1年間は宮島さんをはじめ社内のメバーも出社を前提にするとのこと

仕組みも柔軟に変えていけるところに風通しのよさを感じる

 

新しく入る人の上司となるのが現場監督の光畑さん

現在は全体を見つつ自身の現場も担当している大久保さんと同じくウダツに入る前は大手の同業会社で設計の仕事をしていた

施工管理の仕事は現地調査をもとに現場の図面を作成するところから

図面ができたら宮島さんと協力会社の設計事務所でリノベーシプラを練っていく内容が固まれば現場に入り解体大工工事内装設備工事などすべての工事が滞りなく進むようにスケジールを管理する

完成後は不具合がないかを検査し社内の営業メバーに引き継ぎをして一区切り

宮島とのコミニケーシひとつで物事が進んでいくので仕事は進めやすいですよでも逆に自社で仕入れて企画して売るのでしっかりつくり込まないと売れないってところは大変かな

ウダツの空間づくりは生活動線への配慮を優先し余計な装飾を省いていることが特徴だ

プルな空間だからこそいかにきれいに納めることができるか床下配管を数セチ調整するだけで空間の見え方や使い勝手が大きく変わるため細部が肝になる

リノベーシって解体してみて想定と違うことがちょくちょく起きるんですねそのときにどうリカバリーするかが一番大変だと思います

たとえば撤去しようとしていた室内の壁が実際に工事を進めてみると実は構造壁で取り除けないことがわかった

そこで宮島さんたちと相談し壁を活かしたプラに変更分厚い構造壁を活かして防音室をつくったというそうしたハプニグも楽しんで工事を進めていけるといろいろ吸収できるはず

50年前に大家族が暮らしていた一室200平米以上の部屋をいまの時代のニーズに合わせて少人数の家族向けに物件を3部屋に分けて再販することもあります

大掛かりなリノベーシを経験できるのはウダツならではかなってそれから物件の変化を感じられるのは楽しいというかやっぱり達成感がありますね

 

取材の終わり際宮島さんが話してくれたことが印象に残っている

45歳でウダツをはじめて今年で60歳ウダツはあと10年でいったんたたむと決めたんですよ

少しびっくりしていると宮島さんが続きを話してくれる

宮島さんが2〜30代のときは沢木耕太郎の深夜特急に心酔したバックパッカーで強い円の恩恵を受けてアジア欧州南米を旅していたそう

あれから30年途上国は数十倍先進国でさえ23倍経済成長しているのに日本経済だけが当時のまんま相対的に貧しくなりいまやバウド客たちが日本を安い国として楽しんでるのを見てると不甲斐なく悔しくて

いわゆる少子化や年金問題など大半の若年層が抱く将来不安につながる課題は未解決のままそれらの課題って結局は経済成長つまり給与が年々着実に上がっているうちの会社は粗利が高くケてるそんなふうに働く社員全員が楽観的な未来を確信できたならすべて解決するのでは?というのが自分の帰結で

マクロ的なこと偽善的なことはどうでもいいんですと宮島さん

ウダツにいるメバーも30代中心でビジネスパーソとして成長できる大事な時期

自分がのんびりしていてはその未来には辿り着けない

そこで10年という区切りをつけて創業以来はじめて売り上げ目標を立てることにした

3年以内に年間取扱物件を60件売上を40億円まで伸ばす今の粗利率をキープできれば自ずと社員の平均年収を1000万円まで上げることができる

もちろん購入してくれる顧客に圧倒的な満足をという事業のスタルは変えませんそしてあと10年の経験で社員が独立してやっていけるどの企業からも引っ張りダコの人材になってもらう

これらを実行することがこれからの自分がやるべきことかな

2025/05/13 取材 杉本丞